豊島岡女子学園中・高 (東京都豊島区) 学校探検
進学校への長き道のり

レンガ立てのお洒落な校舎はすぐ脇を首都高速5号線が走っているが、防音が施された校内はそれを忘れるほど静か。
−失礼ながら20年前の豊島岡女子は、中堅都立の併願校でしかありませんでした。それが平成4年に早慶が35名の合格者を出され、平成10年には東大7、医学部21、早慶が79。そして今年平成17年が東大10名うち現役9名、医学部61名、早慶176名。女子では言うに及ばず、男女合わせても屈指の合格実績ですね。ここまで伸びたのは何か秘訣があったのでしょうか

 秘訣というようなものはないんです。学校長の慧眼、教員がその学校長の敷いたレールに乗って一致協力して努力したこと、そして何よりも生徒たちが頑張ってくれたこと。そういったものの積み重ねだと思います。ただ、その中で一つのきっかけになったのは入試日の変更でしょうね。当初、2月1日実施だったのを2月2日に動かしました。これが、平成元年です。そしてその後4日を作り、さらに今の形の2月2日・3日・4日の3回入試となったわけです。
 でも、この入試日を1日から2日に動かす、というのは口で言うのは簡単ですが、これはなまなかなことではないんですよ。まず、2月1日入試に比べ、合格者と実入学者の計算が困難になりますから、万一読み違えた場合に収容する教室がない、ということになったら最悪です。ですから、まずは入れ物、つまり建物ですね、これを作り直して学則定員を変更しなければならない。ずっと、1日で行っていた学校が思いつきで来年から2日にしよう、と言ってできるものではないんです。
 建物をどうかしようと思っても、今度はそのための土地を確保することから始めなければなりません。本校の発行した「いざや我らも」(創立110周年記念誌)にそのあたりは詳しく述べられているのですけれども、昭和44年に隣接する用地を購入して以来、四半世紀がかりでの「進学校にしたい」という努力が結実した、と言えるのではないでしょうか。
「私学たるもの、生徒が志願するに値する学校でなければならない。学校は生徒を選抜するところではなく、それ以前に受験者やそのご父母に選抜されるものなのだ。教育施設を充実させ生徒に十分な教育を施し、学力のある生徒に育て、目標の大学に進学させる。このことこそが私学の使命であり豊島岡女子が目指す道なのだ」という先代の学園長(校長)の思いがようやく形になってきたのだと思います。
校門とアーチ型のエントランス。すべての外来者はこのエントランスを通り、入ってすぐに受付があるのでセキュリティーも万全。

−女子校でありながら、理系、特に医歯薬系に強いのが特徴ですね

 ええ、半分強の生徒が理系に進学しています。本校のカリキュラムは、私立文系、国立文系、そして理系とすべてに対応するという欲張りな(笑)カリキュラムになっています。ですから、特別に理系だけを伸ばそうというカリキュラム体系にはなっていないんです。ただ、これは伝統と言ってしまえば一言で終わってしまうことなのですが、以前から、つまり入試改革を行う前から、将来の職業を見据えて大学受験の勉強に励む生徒は多かったんですね。やはり女子校ですから、将来の職業選択を考えた場合、医療関係に従事するいわゆる医歯薬系を目指す生徒が多かったことは事実です。そして、社会全体の時流の変化も大きかったと思います。保護者や受験生が学校選択をする場合、「豊島岡は理系に強い」という事実に注目され、それがまた理系に進みたいと考える生徒を集めた、というある種の循環はあったと思います。今度はそうなると、数学の教員、理科の教員も張り切って頑張りますから、またそこで好循環が起きる。その積み重ねでしょうね。
 十年前は一クラスだった理系クラスですが、高2で文系4クラスに対し、理系5クラス、高3になると私立文系1クラス、国立文系3クラス、あと5クラスは理系です。

−今年の実績も大変なものでした

 そうですね、一番合格者が多かったのが何しろ理工学部でしたから。のべ人数で理工学部316名、それに薬学部の104名、歯学部18名、医学部61名、農獣医38名。これが理系の合格者です。対して文系は法学部125名、政治経済学部が90名。たしかに数字から見ても理系に強いと言えるかもしれませんね。
 やはり、女子の将来の職業選択を考えた保護者あるいは受験生のニーズに応えたいという強い気持ちは、教職員全体が持っています。女性にとって家庭との両立は難しい問題ですが、選択の幅を広げ、自立できる人間に育てたい。そんな風にわたくしたちは考えています。

−入試問題を見ても理系の科目、算数と理科が難しいですね

 ええ、これだけは現場の教員が絶対譲らない一線です(笑)。わたくしも作問会議に全教科出ていますが、担当教員も張り切って作ってますね。やはり入り口を緩めるわけには行かない、という思いがあるのだろうと思います。
エントランスを内側から見る。落ち着いた雰囲気のロビーはまるでシティホテルのフロントのよう。

―高校募集もずっと続けています

 ええ、女子の中では徐々に少数になってきています。確かに高校を閉じてしまえば、楽かもしれません。でも、私学の高校が次々に高校の門戸を閉じていくのを見るにつけ、これでいいのか、と。しまいには公立しか道が無い、なんてことになっては、高校から受験する方の学問の機会を奪ってしまうことになってしまうのではないか、と。男子校は結構残っていますでしょう、開成にしても、海城、巣鴨、城北、桐朋にしても。学問に関しては男女は無いはずです。なぜ女子校は閉じなければならないのでしょう。保護者の方々の中には、中学受験はさせない、受験は高校受験から、という見識もありますよね。そういう受験生を排除してしまうのはまったくナンセンスです。
 実際には現場の教員たちは大変です。以前は高1のみ高入、中入と分けていたのですが、今は高2まで別立てです。手間がかかると言えば手間がかかります。でも、高入組から東大現役合格者も出ていますし、結果を出していますから。

―将来的に2月1日に参入、という可能性はあるのでしょうか

 いえ、当分は考えていません。どうして第1志望校は1日でなければならないのでしょう。2日の豊島岡を第1志望にして下さるよう、今後も教職員一同頑張っていくつもりです。

―複数回受験の優遇はありますか

 同点で繰り上げ候補者が並んだときに、複数回受験されている方から繰り上げます。それが優遇と言えば優遇かもしれません。でも、受験料もお返ししていませんし、例えば、点数が上位のお子さんを追い抜いて点数が低い複数回受験の生徒を厚遇することはありません。透明性の高い、あくまでも当日の試験での点数を唯一の尺度とする入試を心がけていますので、その点はご理解いただきたいと思います。

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