浦和明の星女子 (さいたま市緑区) 学校探検
毎年2000人以上の受験生を集める、その秘密は?

最寄り駅はJR武蔵野線の東浦和。池袋から24分(乗り換え時間含まず)、西国分寺から32分、新松戸から22分、と意外とアクセスは良い。
―2003年中学開校、初年度から2000人以上の受験生を集めました。初めて東京から埼玉へと流れを作り出した学校ですね。

 ええ当校でもうれしい誤算でした。われわれも800人くらいだろうか、と予想していたのですが、ここまで評価して下さるとは。ありがたいことです。

―中学開校の「狙い」をお話しくださいますか

 当会の沿革をご覧になった方はご存知だと思いますが、当校にはカナダのケベック州に、母体となる修道院(聖母被昇天修道会)があります。昭和9年に6人のシスターが来日、青森に女子教育のための学校を設けたのが現在の明の星女子の前身になるわけなのですが、その修道院の基本的な考え方が中学高校の多感な時期のお嬢さんを6年間をお預かりして、いわゆる中高一貫で育てたいといというものでした。ですから、その青森の学校は中学もあったんです。逆に浦和の方は諸般の事情があって中学を設けることができず、やむなく高等学校と短大という形でスタートしました。つまり、浦和の地に開校した当初からいずれは中学を開校したいという思いがあって、40年越しでそれが実現した、というわけなんです。

―なるほど、中学受験ブームに乗ったとか、高校受験に見切りをつけた、というわけではない、と

 いや、全然違います。(笑)まあ、どうしてもタイミング的に、そう取られてしまうのは致し方ないのですが。

東浦和駅からは徒歩8分。閑静な住宅街を抜けると正門が現れる。周囲の環境は「静謐」という言葉がふさわしい。春にはひばりの声も聞こえる

―高校募集も停止されます

 ええ、これは苦渋の選択でした。 そもそも、中学入学のお子さんが高校1年生になったとき、そのお子さんたちと高校入学のお子さんを同時に教育するのは、カリキュラム上、主として進度の問題ですが、相当な困難があります。中入組と高入組を完全に分離させたままにしておくという考え方もあったのですが、一つの学校の中に全く異質な集団が二つあるのは、明の星らしくない、とわれわれ考えましてね。教える側が中入・高入などと壁を築いてはならない。皆、一つの明の星の生徒ですから。

―従来、2月1日に行われていた高校入試がなくなります。とすると、2月1日に中学入試の2回目を行うという選択はありませんか
 
 まだ中学募集の1期生の大学受験結果も出ていません。そんな中で動きすぎるのはどうだろうか、と。ですので、長期的な展望は分かりませんが、さしあたり来年・再来年に、2回目を2月1日にもってくることは、ないと思っていただいて結構です。


中庭からチャペルを望む。チャペルの鐘楼の3つの鐘には、「信仰」「愛」「希望」の言葉がそれぞれ刻まれている

―学校見学をして、あるいは説明会でのお話を聞いて、いっぺんに「明の星ファン」になったという声を多く聞きます

 今通っている子たちは、本当に明の星を大好きだ、と言ってくれるんです。全体的な雰囲気とか、われわれ教師が生徒に接する物腰だとか、価値観だとか、そういったところを評価してくれるんでしょうね。そして「居心地が良いところ」「頑張れるところ」と受け止めてくれる。大変ありがたいことですし、われわれはそれを大いに宣伝したいですね。それが中学受験のご父母に伝わってくれれば、と思っています。
 実は中学開校をするときに、学校全体でどのように中学受験生に訴えていこうか、と話し合いました。そのときに改めて確認しあったのですが、「明の星は進学実績で勝負する学校ではない。」それが共通理解として常にありました。「六年間、キリスト教の価値観の下で、生徒も教員も一緒に勉強をし育っていく。そしてまた当校では、勉強とは単に教科の学習に留まるものではなく、10年後、20年後の将来の糧になるようなことを学んでいくことなのだ」という、本来の当校のありのままの姿をご理解いただこう、と思いました。我々がお伝えしたいことがきちんと伝わったという意味でとてもうれしいことですね。

―学校説明会でも、進学実績が優先順位の第一位ではない、とお話されているそうですね

 説明会ではいろいろなテーマでお話をさせていただくのですが、当校の場合、どうしても進学実績をお話しするのはあとの方になってしまうんです。べつにないがしろにしているわけではないのですが(笑)、説明会の場でもそのように順序付けをしてお話しすることで、伝わるものがある、と考えています。非常に僭越に聞こえてしまうかもしれませんが、今日当校の話を聞かれて、足りないものがある、とお感じならば、逆にそれが浦和明の星の価値観なんです、と、そのように申し上げるようにしてるんです。

―とはいえ、自然に実績は出てくるでしょうね

 ええ、もちろん、それが楽しみではあります。ただ、必要以上に合格実績を意識したり、過剰に喧伝したりというのはうちらしさではない。また、それを過度に期待されても困りますね。

―今年は東大1名出ました

 はい、職員室でもおめでとう、という声は出ました。でも「よく頑張ったんだね。良かったね」どまりです。「私が教えたんだ」なんて胸を張る教員はいないし、これを上手く広報に使って、などという発想は出てこないです。
 その生徒が、やりたいことを見つけてくれたかな、というのが一番大切なことです。高3の担任も、第1志望に受かった子は皆等しく祝福しています。たとえそれが早慶上智でなくとも。「あの生徒は良くできるから、もっと良い大学をを受けさせてみたら」という発想自体が職員室内で出てきません。

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