本郷中学校 (東京都豊島区) 学校探検
古き良き伝統と新しさを併せ持つ学校

最寄り駅は山手線・三田線「巣鴨」。埼玉方面はもちろん、三田線の相互乗り入れで武蔵小杉から47分と、神奈川方面のアクセスも良くなった
―伝統的な部分と、新しい部分と兼ね備えた学校ですね。

そうですね、例えば、合格発表日に不合格だったお子さんに対して希望の方は別室にお呼びして点数を開示しています。当校は複数回の入試を実施していますから、1回目の時不合格ではあったが、それがどの程度足りなかったのかを開示することは受験生にとってはメリットが大きいだろうと考えました。どの科目が足を引っ張ったか、それが分かれば、その部分を強化して二回目、三回目に臨むことができます。それで結構、合格したと言うお子さんもいるんです。
この点数開示も含めて、「開かれている」と言いましょうか、「本郷は隠さない」という学校の基本姿勢を受験生とそのご父母にお伝えすることができます。

―試験日当日に、模範解答まで配布されています。

 問題と解答を渡せば、それをもって普段通っている塾に行かれて次の受験に向かって準備することができます。要は受験生にとってのメリットを第一に考えよう、と、そこから出ている発想です。

―そのような学校改革が実を結んで、近年は厳しい入試です。

 おかげさまで、ようやくわれわれの目指しているものが受験生のご父母に伝わってきたかな、と。また、学校の教員も、どんどん若い、エネルギーのある先生が入ってきました。その先生たちが若さの良い面で引っ張っていることもあります。
 でも、まだ、私たちの目指すレベルを考えた場合、半分くらいの達成度でしょうか。もっともっと学校全体が努力していかなければなりません。

巣鴨駅からは徒歩4分。周囲には三菱養和クラブのグラウンドなどがあり、意外と静か。

―教育目標として「社会のリーダー足りうる人材の育成」をあげています。

 私はよく「人間力」と「社会力」という言葉を使います。「人間力」というのは幅広い、人間として生きていく力です。そこには健全な肉体、という意味もありますし、基本的生活習慣や思いやりなど、勉強以外にもいろいろなことが必要になってきますね。
「社会力」とは「社会性」、つまり周囲とのコミュニケーション能力ですね。自分の考えをきちんと述べられる、人の意見をきちんと聞ける、ということ。バランスが良くないと、社会に出てからもリーダーシップを取れません。いくら専門的知識があっても「独りよがり」になってしまってはいけないのです。
 ですから、当校では英語や国語の時間にスピーチやディベートを取り入れ、周囲に対する発信能力、つまり分の考えをきちんと述べる力を育てるようにしています。あるいは、ロングホームルームで、一つのテーマを決めてクラス全体で議論する。先生も議論に参加するのですが、生徒にやっつけられることもあるようです(笑)。

―「早朝読書」もその一環でしょうか。

 読書は人を育てますからとても大切です。毎朝10分、各自が持参した本を読みます。特にこちらで指定図書のようなものを与えているわけではありません。でも、みな、かなりきちんとした本を読んでいるんですよ。その点は感心します。

本郷のシンボルの一つである、校門からグラウンドに沿って並ぶ並木道。訪れる人に「学校らしい学校」のイメージを抱かせる

―「個性重視」をうたっていますね。

 はい。ただし、ここで大切なのは、「個性重視」とやりたいことを勝手気ままにやることを許すのは違う、ということです。社会の一員として生きる以上、「個性」というのは、あくまでも大きな「枠組み」を守った上で、その上に成り立つべきものです。
 「個性重視」という言葉が独り歩きしてしまうと、ややもすると「好きなことを勝手にやれば良い」ということになってしまう。そうなってはいけないよ、と。専門性に長けていることは悪いことではないのですが、他者とのかかわりがないと孤立してしまう。
 当校がクラブ活動に重きを置いているのも、クラブ活動というのが人間関係を広げる大きなきっかけになると考えているからです。

―「指名補習」というシステムがあるそうですね。

 ええ、基準点に達していない生徒を、まさに指名して放課後に残すわけです。そのときはクラブ活動を休むことになりますね。理解不十分な生徒を放置しておくと、分からないところが雪だるま式に膨らみますから。ただ、これも改善すべき点がありましてね、定期試験が終わって不合格ラインを下回った生徒を残しても遅きに失するわけです。ですからそれ以前に、もっと日常的に小テストなどを活かしてその都度やるべきではないかと思いまして、そのように教師にお願いしています。

―先生方も大変ですね。

ええ、でも、「面倒を見ます」というのが受験生に対する公約ですからね。

―「教養講座」について教えてください。

 一学期の期末試験が終わり、終業式の後に自由参加で行います。父母やOBに講師として講義に立っていただくこともしています。今年はお医者様のご父母に人体の仕組みを、あるいは外務省関係のお勤めの父母の方に国際関係をテーマにして講義をしていただきました。好評でしたね。一部のコース(これは外部に委託したネイティブスピーカーによるいわゆる「イングリッシュ・シャワー」ですが)をのぞけばすべて無料です。 この夏期教養講座以外にも、学期に一回の講演会を開いています。たまたまアテネのパラリンピックで全盲のマラソンランナーの方の伴走者が本校のOBだったものですから、そのOBと全盲のランナーの方に依頼して話をしてもらったり。
すべて「広い見識を持ってもらいたい」という理念に基づく行事です。

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