渋谷教育学園幕張中学校 (千葉市美浜区) 学校探検
21世紀にふさわしい学校を目指し

最寄り駅は京葉線の海浜幕張。八丁堀から京葉線快速で27分、新松戸から武蔵野線直通で30分とアクセスは意外と良い。駅からはゆっくり歩いても10分以内。
−まずは、教育目標について教えてください。

 そうですね、当校の教育目標については、「自調自考」という言葉に顕著に表されていると思います。言葉の意味としては、字の通り「自ら調べ自ら考える」ということですが、例えば進路にしても、自分自身の興味関心から調べてそして考える。日常の学校生活にしても、「これが入試に出るから覚えておきなさい」と言う、いわば与えられる学習で満足するのではなく、自分自身で授業で学んだことをきっかけとして、自ら深めていく。そういう生徒を育てていきたい、と思います。

具体的には、例えば理科では実験や観察を重視する。社会科なら授業中のスピーチやレポート作成を取り入れる。そのような「自分の頭で考える」という姿勢を大切にしています。
 よく本校では「渋幕的自由」という言葉を紹介しています。「自由」というのは、あくまでも「責任」を伴っているものですよね。放任とは違います。私たちが言うところの「自由」は突き詰めていけば「自調自考」という言葉に行き着くと思うのです。

−ノーチャイムですね。

 ええ、当校ではかなり前から取り入れていまして完全に定着しており、慣れると違和感は全然感じないのですが、確かに珍しいかもしれません。正確に言えば、朝8時20分の予鈴と、昼休みが終わる1時15分の2回は鳴ります。ですが、授業の開始終了などのチャイムは鳴りません。これは、最低限の規律というのは強制されて行うのではなく、自分たちで律していくものだ、という考え方に基づくものです。自然に時間になるとそれまで大騒ぎしている生徒たちも各自の教室に入ります。

通学路となる国際大通りと幕張テクノガーデン。街自体が新しいので道幅も広く、ごみごみした雰囲気とは無縁。メッセや日本IBMの社屋など、21世紀の街、という表現にふさわしい。

−以前、卒業式を拝見したときに、壇上で校長先生から一人ひとりが卒業証書を受け取るのですが、そこで校長先生にレイを掛けたり、紙ふぶきをかけたり、そんな生徒がたくさんいて驚きました。他のいわゆる伝統校と言われる学校の式典とはずいぶん違いますね。

 卒業式では、退場の際にクラスごとにテーマ曲を自由に選びます。そしてその曲をバックに一人ずつが壇上に上がり、校長から証書をもらい、握手をして降りる、という流れになっています。最近は壇上で校長先生と記念写真を撮るのがトレンドでしょうか。(笑)入学式でも、生徒一人ひとりが壇上に上がり、校長と握手をします。まさか、入学式で校長先生と握手をするとは思っていない生徒が多くて、それだけに晴れがましく、また印象に残るようですね。またそのことによって「一人ひとりをちゃんと見てくれているんだな」と感じるでしょうし、それも大きな意味を持っていますよね。
 当校は、式典はしっかりやろう、というのが前提としてあります。ですから旅行に出かける前は「結団式」のようなものもやります。もちろん、厳かな部分は厳粛に行います。ただ、その厳かなパートが終わったあとは、無礼講的な雰囲気になります。大切なのは「けじめ」だと思っています。それは、ふだんの学校生活の中でも同じです。遊ぶときは破目をはずして遊び、しかし、学ぶときは真剣に学ぶ。そういった切り替えがきちんとできる人間に育って欲しいですね。

−旧来の学校の殻を破った、言わばアメリカのハイスクールのようなイメージがあります。そのような、旧態依然とした日本の学校教育を変えていこう、というような意識があるのでしょうか。

 1983年に本校の高校部が開校し、その3年後に中学が開校しました。もう21世紀を目前に控えていた時期です。開校時、校長は、「これから作っていく学校は、今までと違うタイプの学校でなければ、21世紀に必要とされる人材は育てられないだろう」と考えました。そこで、「自調自考」「高い倫理観」「国際人としての資質」の3つを教育目標としたのです。
 それまでの日本の教育は、西欧に追いつけ追い越せ、という社会全体の目標にも合致していたわけなのですが、どうしても「これだけ勉強しておけばいい大学に入ることができ、そしていい会社に入れるよ」という、あらかじめ目標レベルが設定されていましたよね。それに向けて、ただ何も考えずに与えられた勉強をこなしておけば良かった。でも、これからは違う、そう考えたのです。新しい学校でありますから、今まで行われていたことを単純に追従するのではなく、一つ一つきちっと点検しながら、変えていけるものは変えて行こう、と考えました。。もちろん、学校ですから変えてはいけないコアの部分というものはあります。なんでもかんでも変えていくのではなく、そのコアの部分は大切にしながらも、単に今までそのようにされていたから、という理由だけで踏襲するのはやめよう、ということです。

周囲には神田外語大、県立衛生短大、昭和学院秀英中、放送大学などが立ち並ぶ。すぐ校庭の脇を東関東自動車道が走るが、校庭が広く校舎までは距離があるので騒音はまったく気にならない。

−校長の田村先生は、渋谷幕張を「麻布中学の共学版」になさろうとしている、とか。

 田村校長自身が、麻布の中高一貫の二期生であり、今でも麻布中学の理事をしています。ですから、その思いが学校づくりに反映されていることはあるでしょうね。と言って、日常の校務の中で、麻布中学さんの名前が出てくることはありませんが。

−共学にも強いこだわりがあるとのお話ですね。

 この学校を作るときに、男子校・女子校という選択肢もありえましたし、また男女別学という手段をとろうと思えばとることもできました。これまで、中高一貫で共学の進学校というのはなかなかありませんでした。男女がともに学びながらそれぞれが得ていくものがあるはずです。例えば、女の子の方が発達を遂げる時期が早いですから、中学入学直後は女子がしっかりしています。それが男の子たちの自立を促す原動力になっています。また、高校に進むぐらいから今度は男子がしっかりしてきます。そして勉強も行事も男子が引っ張っていく。一緒にいることで、互いの違いを理解し、刺激し合い、活性化していく。それが一番のメリットですね。

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