成蹊中学校 (東京都武蔵野市) 学校探検
「桃李ものいはざれども下おのづから蹊を成す」―成蹊教育の源流―

武蔵野市吉祥寺北町に位置する成蹊学園キャンパス。創立100周年を迎えようとしている今、「個性を持った自立的な人間の創造」を目指し、変化の激しい現代にあっても変わらず教育姿勢を保ち続ける。
―2012年が御校の創立100周年にあたると伺っていますが、御校の沿革について教えて下さい。

1912年が学校のスタートですが、その前1906年の段階で創立者・中村春二先生が自宅を私塾として開放しそこを「成蹊園」と名付けたところがはじまりです。“成蹊”という名前の由来は「桃李ものいはざれども、下おのづから蹊(こみち)を成す」ということわざからきています。「桃や李(すもも)は何も語らないけれども、そのおいしい果実や美しい花にひかれて人が寄ってきてその下に自然と蹊ができる」つまり人格のある人物のもとに人は集まってくるということです。創立より、寝食を共にして子供たちを育てることを重視しており、今でも成蹊の小学校・中学校では必ず年1回まとまった宿泊行事をしています。また、最初私塾であった関係から一人ひとりを大事に育てましょうということで、集団指導よりも個別指導を丁寧にという指導方針を持っています。
1912年、成蹊実務学校として創立されますが、将来社会で役に立つ活躍できる人物を育てることを考えていましたので、今でも我々教員は将来の社会人を育てているという意識を持って子供たちと接しています。
その後1925年に7年制の高等学校の時代を迎えます。当時の状況では高等学校を出た卒業生の多くはいわゆるエリートとして社会を支えるリーダーの道に進むことが多かったのですが、能力だけは高いが人間としての器量に欠けたようないびつなエリートではなく、人間性豊かで誰からも信頼されるようなエリートを育てることを指導方針とし、学校全体が人格教育に力を入れていました。
終戦後新制に変わりますが、その後に成蹊大学ができていますので成蹊大学に入れるための付属校という発想ではなく、成蹊大学を含めて様々な進路へと進んでいく進学校と考えています。現在でも卒業生の3,4割が成蹊大学、6,7割くらいが他大学へという進路になっています。

正門から続く欅並木を歩く成蹊生。制服は女子はシックなセーラー服、男子は紺の詰襟。制服の人気投票でもでも常に上位にランキングされる。ちなみに成蹊学園のスクールカラーは紺青。

―「新・成蹊創造プラン」とはどのようなものですか。

成蹊学園は、創立以来の長い伝統の上に教育機関として確固たる地位を築いてきました。しかし、変化する時代への対応力を身につけていかなければ、競争力を維持することはできません。このような観点から、成蹊では、2012年の創立100周年を迎えるにあたって様々な記念事業を展開しており、それらの記念事業を「新・成蹊創造プラン」と呼んでいます。
このことは、時代に即応する新たな価値を付け加えることによって、さらなる教育・研究活動の高度化を目指し、成蹊学園の社会的声価を高めることを大きな目的としています。
今の時代にリーダーシップをとれる人物、国際社会の中で生きていける人物を育てるために、特に学園をあげて国際教育に力を入れておりまして、「国際教育センター」という組織を設立しました。中学・高校では、主に留学制度や、留学生に対する日本語教育のプログラムなど、国際理解教育のための様々なプログラムを用意しています。
また、教育環境の充実を図るために、小・中・高の新校舎が完成しました。

―一言で「成蹊らしさ」を表現するとどうなりますか。

「個性を豊かに」ということを大事にしている学校です。例えば中学校では“自律と自立”をモットーにしていますが、いろいろな個性を理解し、自分の個性を大事にできる生徒たちというのが一番の成蹊らしさかもしれません。

―3月23日が「建学の日」とされていますが。

1912年4月1日に池袋に成蹊学園の前身となる成蹊実務学校の校舎を建てたのですが、3月23日に隣の豊島師範からの出火で建ったばかりの校舎が燃えてしまったのです。それでも8日後に何としても開校するんだという創立者の強い信念で、突貫工事で仮校舎を建てて間に合わせたということがありました。成蹊の建学を支えたのはこの不屈の信念・情熱であろうということで、この日を「建学の日」としています。近年ではこの日はボランティア活動の日として、日頃お世話になっている街の清掃を教職員・生徒一体となって実施しています。

最寄り駅はJR中央線・京王井の頭線の吉祥寺。歩くと約20分、バスでは乗車5分。吉祥寺は三多摩地区の代表的ターミナルだが、渋谷から井の頭線急行で17分、新宿から中央線快速で14分、とアクセスも良い。

―中学受験を目指す生徒・ご家庭にとっては小学校から来られる内部進学の生徒さんにうまく溶け込めるかという心配があるようなのですが…。

入試で入ってくるお子さんはよく勉強していて多くの知識を持っています。一方、内部進学の生徒は私学でもあり「学校で学ぶ」という姿勢をもっていろいろな経験をしてきています。この出会いが両者にとてもいい影響を与えていて、よりお互いの知的好奇心を増す結果となっていると思います。入学して1週間程度は新入生歓迎週間となっていて、ホームルームやオリエンテーションの場で学校生活・クラブ活動・生徒会のしくみなどの紹介をしてスタートします。中1の1学期は融和のための期間と考え、行事なども班別活動を大事にしています。「夏の学校」という車山高原への宿泊行事がありますが、そこでも仲間作りを重視した寝食を共にする4日間となります。自然観察では卒業した先輩が手伝ってくれます。「成蹊らしさ」を肌で感じる行事です。

―学習指導の特色はどのような点にありますか。

全ての科目をきちんと学んでもらいたいという方針を持っており、必修科目が多い形になっています。社会に出たときに教養ある人物になってもらいたいという願いがあって、一度は全て学んでもらいたいのです。これは高校から入る生徒に対しても同じです。考え方としては食わず嫌いではなくて全てのものを味わったうえで、その後で本当に好きなもの好きな道を選べるようなカリキュラムになっています。
 他校と違う点は、入口であまり急がせることなく、中学1年の間にきちんとした学習習慣・生活習慣を身につけてもらって、中2・中3で学力向上を目指す、という点だと考えています。難しいことを何でも早目にという先取りは行っていません。ですから高校から入学する生徒もあまり困らないと思います。

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