武蔵中学校 (東京都練馬区) | 学校探検 | ||||||||||||||||||||||||
進路と入試
毎年一・二名というところでしょうか。もちろん、ゼロの年もあります。基本的に落第させることを目的にしているわけではありませんから。 ―高校での留年は? 多い年で3・4名でしょうか。 ―その基準というのはどのようになっていますか。 中学にせよ、高校にせよ、ある1年の成績だけで見る、ということはありません。中学なら3年間、高校でも2年間というスパンで見ます。もちろん、ある日突然「君は進学(進級)できないよ」ということはありえません。そこに至るまで、組主任、これは一般で言う担任のことですが、組主任が相当声をかけたり手を差し伸べたりします。 ―キャリアデザインを重視されていると聞きました。 一学期の期末試験が終わった後、特別授業期間というのがあるのですが、この時期にOBを中心として10名くらいの方をお呼びします。一つの枠、2時間枠ですが、ここに3名の方にお話をしていただいています。高2生対象ですが全員参加です。 講師の方々のお話は、高校時代どのような勉強をしたのか、現在どんな仕事・研究をしているのか、今の道を選んだ理由、そのためにどのような大学のどのような学部に行ったのか、そのあたりが中心です。80歳を超えた東大名誉教授の先生から30代の方まで、いずれも第一線で活躍している方々です。 ―励みや刺激になるでしょうね。 ええ、終わったあと感想を書いてもらうのですが、ずいぶん刺激された、というものが目立ちます。また、これらの方々とは別に、現役の大学生の話を聞く場も設けています。卒業後4年目の学生さんに協力いただいて8名ほどお呼びします。こちらは一人10分程度の話ですが、一番身近な先輩の話ですから、聞く方の諸君も身を乗り出して聞いています。 ―御校は文系理系のいわゆるコース分けをされていませんが、そのあたりの理由をお聞かせいただけますか。 コース分けはしていませんが、高2段階から理社は選択になっていきますから、そこで文理の色分けは自然に出てきます。高3になりますと選択科目がかなり増えます。H.R.で授業を受けるのは週に数コマ、という感じで、それ以外は皆、選択した科目の教室に移動して受けるイメージですね。ですから、コース分けをしていないと言っても、受験に不要な科目が大きな割合を占める、ということはありません。 そんなわけで、せめてクラスにいる時は文系理系のコース分けは不要だろう、という考えです。L.H.R.で行事に関していろいろな意見を戦わせるときは、いろいろな立場が混ざり合った方がいいだろうと思いますし。
教育というのは、変えてはいけない部分と、時代に合わせて変えていくべき部分と、両方あると思うんですね。武蔵の教育においては建学の三理想にもある、「自ら考え調べる」「自立した精神を身につける」「国際的視野をつける」という部分はやはり変えてはいけないのだろうと思います。 今日の、高校に対する評価基準が、ある特定の大学、例えば東京大学への合格人数でしか測っていないという傾向があるというのは大いに疑問を感じていますし、また機会があればそれを申し上げています。しかしながら今本校に通っている生徒を見ると、やはり東京大学にはもう少し入っていいはずだ、とも思います。そこで高3では大学受験をもっと視野に入れた授業展開にして行こう、ということに、学内でもなっています。 ―現場の先生方もそれなりに危機感を持っている、と。 そうですね。OBの意見で中心的なのは「大学受験なんて、人に頼ってはいけない。あくまでも自分で学んで行くものだ」というものです。彼らは事実、そうやって東京大学を始めとする難関大学に進んだのですし。ただ、今のお子さんは、もう少しこちらで手をかけてあげないといけない。 今申しましたように、その方向に舵を切りましたから、今後は数字はもっと伸びていくのだろうと思います。 ―御校に限らず、中学校の入試問題というのは受験生や父母に向けてのメッセージという面もたぶんに持っていると思うのですが、そんな中で、とりわけ武蔵の入試というと、記憶やパターン演習に頼るのではなく、じっくりと考えそれをきちんと表現する力、というのを求めているように感じます。 はい、本当の理解力と表現力を見たい、という気持ちです。
それまでは理社をいっしょに60分の中で解く、という形式でしたが、40分ずつに分けました。 ―それにともなって、四科の中で理社が占める割合も若干高まりました。これは総合力をもう少しきちんとみたい、という意図でしょうか。 それもありますが、以前は理社でひとくくりだったので、時間配分を間違えてしまう受験生が後をたちませんでした。社会は良く出来たのに、理科は全然手が回らなくてほとんどできなかった、というようなケースですね。それならばいっそ、理社をきちんと分けてじっくりと取り組んでもらおう、という狙いです。 ―理科の「お持ち帰り問題(受験生全員に実物を渡し、所見を書かせる問題。終わったら持ち帰っていいのでこの名前が付いた)」は健在ですね。 「いい材料があった時は出題しますよ」というのが原則なのですが、実際はこの20年以上で、出さなかった年は1回だけでした。 ―作問される先生も大変ですね。 そうですね。いろいろ工夫がいると思います。 ―今日は長時間、ありがとうございました。 取材を終えて 武蔵野の面影を色濃く残す豊玉の地にある武蔵中高。訪れた日は、中学生がキャンパス内の小川で熱心に観察をしていました。教育設備も充実しておりそれも単に物量作戦に頼らず、あくまでの「質の高さ」を目指しているのが伝わってきました。 「打ち込みたいことがある生徒には本当に充実した6年間になると思います」という先生の言葉は、まさに偽りのないところなのでしょう。 東大合格者数だけを取り上げて「武蔵凋落」のような評判も聞きますが、そういった尺度そのものに自然と疑問を覚えてしまうようなひとときでした。 校務ご多忙の中、丁寧に質問に対して受け答えをしてくださった山崎元男先生、本当にありがとうございました。
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