芝学園中・高 (東京都港区) 学校探検
進学実績V字回復!

明治43年に芝学園校長に就任の渡辺海旭先生の像と、校訓「遵法自治」 渡辺先生はカルピスの名付け親でもあるという
―今年の進学実績は素晴らしかったですね。東大に12名うち現役7名、東工大11名現役10名、それに医学部に強い。そして早慶に150人。何か秘訣があったのでしょうか。

 一つは去年の実績がよくなかったので、教員がみな危機感を持って頑張ったということがあります。やはり、入り口のお子さんたちのレベルを考えた場合、東大に10から15名、早慶に130から150名というのは、当たり前のハードルだと思っていますから。そういう意味では、ちょっと去年は悪すぎました。
 それから、ここ2年前くらいからの試みなのですが、「進学指導」だけでなく、「進路指導」に力を入れました。
 生徒たちに大学の先、自分が将来何になりたいのか、ということをまずしっかり考えさせたのです。そして、その職業に就きたいのならどういう大学のどういう学部で学べばいいのか、つまり自分の将来像から逆算して大学選びを考えるようにした。その一環として、「希望職業別」のHRを作り、そこで教員が資料を渡したり、逆に生徒にその職業に関して調査させてそのクラスの中で共有させたりしました。
 実績を伸ばしたいとついつい目先にこだわってしまいがちです。この偏差値ならこの大学の法学部は無理だけど経済学部なら入れる、というような。しかし、思い切って発想を転換しました。まず、大学の先の一生の仕事を考えよう、と。これが生徒たちの勉強の支えになったのでしょうね。つまり先生方の努力と生徒のモチベーションがうまく噛み合った。それが今春の結果にあらわれたのでしょう。
 ただ、芝のおだやかな校風、人を育てる気風というのは捨てたくありません。勉強ができればすべてOKとは思っていませんから。その実績と芝らしさのバランスが難しいですね。

−―穏やか過ぎて実績が出なくてもいけない

 ええ、やはり男子進学校というのは実績を出さないといけません。でも、預けてくださったご父母が芝に何を期待されているのかも考えなくてはいけない。それは、大学に入りさえすれば良しとする、という期待ではないと思うのです。

都心の学校の例に漏れず、グラウンドは残念ながら広くはない。ちょうど運動会の練習の最中でした
―芝はずっと2月1日に第1回目、2月4日に第2回目入試をしています。やはり6年後に大学合格実績を引っ張り上げているのは4日の2回目入試で入ってくる受験生なのでしょうね

 いや、これが実はそうではないんです。当校は「特別進学クラス」とか「特別選抜クラス」を作っていないんです。そういう意味では、中学入学時の学力差はすぐになくなります。よく「東大とかに受かってらっしゃるのは2回目入試で入ってきたお子さんなんでしょう」なんて言われるのですが、まったく違います。進学先あるいは受かった大学にしても、そして現役合格率にしても1回目入学組と2回目入学組の差はほとんどない。現実に偏差値的に観れば、2回目入試で入ってくるお子さんの方が間違いなく高いです。でも、1回目の1日で入ってくるお子さんは、一言で言えば「芝が好き」なんです。単純なようですが、この「愛校心」というか「芝中に対する愛着」というか、そういったモチベーションはあとの勉強に確実に深くかかわってきますね。やっぱり「あーあ、芝になっちゃった」というのは勉強も伸びません。
 でも、不思議なもので、入学時に第3・第4志望だった子達もアンケートをすると、いつの間にか「芝が好き」に変わる。中学で9割の生徒が「芝が好きだ」と答えます。

今回取材を受けてくださった入試委員長の石川先生。 飄々とした語り口でしたが、ユーモア精神も旺盛な先生とお見受けしました
―なるほど。芝には不思議な魔力があるのかもしれませんね。 この@2/1 A2/4 は当分変わりませんか

 ええ、当分変える予定はありません。
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