鴎友学園女子中学校 (東京都世田谷区) 学校探検
進学実績と学園生活

校外学習(中2)の様子。校外学習以外にも、軽井沢追分山荘生活学習(中1)やスキー教室(中2)、尾瀬の山の会(有志)、箱根合同研修会(高1)、修学旅行(中3・高2)など、さまざまな学校行事を通して鴎友精神を培い、豊かな人間性をはぐくんでゆく。
―今年度平成18年は、国公立現役が53名、早慶が83名。素晴らしいですね。

国公立志向は年々強まっています。センターが5教科7科目になりまして、受験生の負担増、と言われましたが、本校ではもともとすべての科目を手厚くしていますから、むしろこれはチャンスだと思いました。生徒の進路に特徴的なのは、理系の場合は医歯薬系だけでなく、理工学部、農学部など、進学先が幅広いこと、そして文系の場合は法学部・経済学部などの社会学系が多いことです。

―ただし、××大学何名という目標を掲げて、それにまい進する学校ではない、と。

はい、そういう目標の掲げ方は本校になじまないと思うのですね。もしも本校に対して「補習に追われて、宿題も山のように出て、それをこなすために睡眠時間を削って」というようなイメージを抱かれているとすればそれはまったく違います。勉強は自分の力でやらないと身につかないものです。人に言われてやらされる勉強では伸びていきません。私たちはむしろ、自分でやる力を育てる、というか、その学ぶ気持ちを伸ばす指導をすることが大切であると考えています。

―大学受験一直線、ではないのにこの実績はすごい。

いえ、むしろ逆です。学校改革以来のこの20年でよく分かりました。わき目も振らず勉強オンリー、という育て方では、人を伸ばすには限界があると感じています。

―塾通いはどの程度の割合ですか。

中学1年生の7月に調査をしたところ、学年で2人でした。高校1年生で30%くらいでしょうか。ただこれは年々減っています。最近は塾に通わず学校の勉強中心でやる生徒が増えました。

―ユニークな「自己申告書」による進路指導について教えてください。

高校2年生から3年生に上がる春休みの課題にしています。SFC(慶応大学湘南藤沢キャンパス)の出願時の申告書が原型です。内容は「自分の将来について」「大学という場に期待すること」「あなたの全体像を自由に書きなさい」といった論文がいくつもある形です。いわば自分に向き合う作業です。自分がこれまで何をして来たのかを再確認させ、そして何のためにどういう方向に行きたいのか、それをしっかり認識させたい。それができていない生徒については、輪郭を具体的にさせたい。そういう意図です。いよいよ受験学年を迎える高2の春休みにこれを行う意味は大変に大きいですね。

―文系・理系ではなく、英語コース、数学コースという分け方は他校にはあまりないですね。

英語コース、数学コースというのは高2での分け方、高3では理系文系に分かれます。少し英語を多めに勉強するコース、少し数学を多めにするコース、という分け方ですが、数学コースの中には文系の生徒と理系の生徒が混ざっています。文系でも数学を試験科目で必要な場合がたくさんあります。早い段階で文系理系にしてしまうと、文系の生徒の数学がなかなか伸びないんです。ですから2年生のうちは、文理という分け方よりも英語コース・数学コースという分け方のほうが良いだろう、と。
理社に関しては学年全体で時間割を揃えて、自分の取りたい科目の教室に移動する形です。自由に選択できますので、例えば数学コースは将来理系だから自動的に理科は物理・化学で、英語コースは将来文系だから地学・生物、というような縛りはありません。

演奏会のできる音響設備が整ったホール。20,000uを越す敷地に、1号館〜4号館の校舎、記念館、図書館、ホール、体育館が配置されている。

―土曜日はどのようにされていますか。また夏期講習は。

土曜日は普通に登校して4時間の授業があります。公立の学校が週5日制になったときに、本校でも週5日制にしたらどうなるだろうか、というシミュレーションをし、実験的に3週間だけ試行してみたことがありました。そうしましたら、それまでの質と量を維持したまま、5日制をするためには、もう普段の日の負担がとても大変になってしまいまして。生徒も父母もそして私たちも悲鳴をあげました(笑)。おそらく、今後も5日制は導入しないと思います。
夏期講習会は自由参加ですが、参加率は高いですね。高1からありますが、中心となるのはやはり高3です。9割近い参加率です。

―放課後にも講習がありますね。

週3日、外部の講師の先生をお願いして行っています。対象となるのは高2・高3です。学校が終わって塾に行くのではなくて、学校でもう少し学びたい、という声に応える形です。6時間目が終わったあとに行います。

―音楽や美術の講習もあるというのはすごいですね。

6年一貫校ですから、早い時期に芸術方面に進みたいと思っている生徒にはそれなりのサポートをしましょう、ということです。このところ、東京芸大にも毎年合格者を出しているんですよ。

―宿題の量は。

多いかもしれません。ただ、それによって睡眠時間が確保できないというような膨大な量ではありません。教員の中に「学習研究係」という係りがありまして、どうしても宿題が多くなりがちな夏休みなどは、すべての教科の宿題の量を把握して、過重負担にならないように心がけています。「○○先生、ちょっと削ってください」みたいな(笑)。
あとは、提出時期がそろってしまわないように少しずつずらすといった工夫をしています。

―クラブ活動は盛んですか。

みな一生懸命です。活動日の制限がありませんから、毎日活動しているクラブもたくさんあります。運動系のクラブは過負担にならぬよう「定休日」という制度を定めています。週一回は自主的にクラブを休んでもいい日、という意味ですが、この定休日で休んでも、レギュラーをはずされたりということのないよう、共通理解として公の仕組みとなっています。運動系は結構活躍しているんですよ。世田谷は区全体のレベルが高いので、どの競技も区大会を勝ち抜くというのは大変なんです。その中で例えば剣道部は常に区で三位以内、毎年都大会にも出場しています。ソフトボール、テニス、陸上も都大会出場の常連、テニスは高校では、私立校の大会で三部に所属しています。この三部というのは強豪揃いです。バトン・卓球も都大会レベル、バレーボールは去年は関東大会に出場しました。文科系も、運動部のような大会は少ないですが、大変盛んです。クラブ活動の参加率は、中学はほぼ100%です。高校生でも、昨年は89%でした。これは義務付けているわけではなく、完全な自由参加です。

今回取材に応じてくださった大内まどか先生。広報部長の要職を務めながら、英語の先生として教壇に立たれています。闊達に「鴎友の精神」を語ってくださいました。

―中学から高校への進学基準はどのように定まっていますか。またついていけずにやめていく生徒の数・割合は?

中3前期で、評定平均が10段階で5.0未満の生徒については、ちょっと厳しいのではないでしょうか、ということで他校受験を進める場合があります。これはもちろん絶対評価ですから、評定の平均が7とか8の科目が大半である中で、全教科を合わせた平均値が5未満というのは、かなり緩やかな基準です。なかなか学校に出て来られないとか、特殊な事情を抱えているお子さんがほとんどですね。そのようなお子さんでも、その後の様子を見て12月に再審議をしまして、高校への進学が復活する場合もあります。外部受験する生徒は、年度によって違いますが、学年で1・2名、多い年でも5人には達しません。転居等の事情を除けば、中1で入学したお子さんのほぼ全員が高3で卒業しているといっていいでしょう。どうしても共学校や大学付属校に行きたい、といった進路変更が大半で、進学できないケースはまずありません。ついていけなくなる前に、担当教員や担任がいろいろな形でフォローします。その生徒だけの課題を出したり、それでもだめなら残ってもらって目の前で問題を解いてもらったり。

―校則について教えてください。

一般的な校則はもちろんあります。茶髪やピアスは禁止です。あるいは、下校時に店などに立ち寄るということは、安全に帰宅させられないので、いけません。携帯電話は許可制です。
ただ、だからといって髪を茶色にしたら学校に入れない、というようなことはありません。
例えば髪を染めたりピアスをするなど、その生徒が校則を破るときというのは、何か他に要因があるんです。周囲の生徒や教員に対するある種のメッセージの発信であることがほとんどです。それを我々がしっかりキャッチしてあげることの方が大切であると思います。

―現在の中学校の入試形態はこのまま続けていかれますか。

はい。基本的にはこのままです。これからも4教科のすべてが100点満点の入試を続けます。ただ、5・6年後には今の3回入試を2回にしたいと思っています。

―複数回受験の優遇については。

ボーダーライン上に同点で並んだときは3回受験していただいた方から合格させています。ただそれ以上は、申し訳ありませんが、それ以上の優遇はできません。これは3回願書を出した方、という意味ではなく、実際に3回受験した方、という意味です。

―本日はどうもありがとうございました。

取材を終えて
 一言で鴎友学園を表現すれば、「バランスの取れた学校」ということになるでしょうか。非常に細かいところまで行き届いた教育がされており、これも教職員の方々のご努力の結晶と感銘を受けました。「合格実績と言うのは、ただそれだけを伸ばそう、数字だけを上げようとしても伸びていかないものなのです」という先生のお言葉がすべてを語っている気がします。大内先生、お忙しい中、どうもありがとうございました。


 ■学校データ
〈住所〉東京都世田谷区宮坂1-5-30
〈TEL〉03-3420-0136
〈生徒数〉女子745名
〈最寄り駅〉東急世田谷線「宮の坂」4分、小田急線「経堂」8分
〈URL〉http://www.ohyu.ed.jp
〈試験日〉第1回目 2月1日(約100名) 第2回目 2月2日(約100名) 第3回目(約20名)
〈選抜方法〉国算理社(各50分各100点)、自己申告書
〈難易度〉@61(四谷大塚80%) 59(日能研R4) A62(四谷大塚80%) 61(日能研R4) B63(四谷大塚80%) 62(日能研R4)
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